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松山地方裁判所今治支部 昭和44年(ワ)64号 判決

原告

塩崎伝一

被告

高井観光有限会社

主文

被告は原告に対し金一〇八万六、四二四円およびこれに対する昭和四四年七月三〇日以降、右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

この判決の主文第一項は原告において金五〇万円の担保を提供するときは仮りに執行することができる。

事実

第一、申立

一、原告

(一)  被告は原告に対し金二〇〇万円および、これに対する昭和四四年七月三〇日以降、右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二、被告

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二、原告主張の請求原因および被告の抗弁に対する答弁

一、被告会社はかねて岸本毅らを雇用し、同人らに被告会社所有のブルドーザを運転させて今治市近見山の作業場において整地等をしていたもの、原告は昭和四二年五月四日被告会社に日給一、二〇〇円で人夫として雇われ同作業場で働いていたものである。

二、昭和四二年五月六日午後零時二〇分ごろ前記作業場において、それより少し前に岸本毅が運転していた被告会社のブルドーザを停めて昼食を始めるにあたり、同車輌を停止させるに際し、同車が滑り落ちることのないように、傾斜地をさけて平坦な場所に停車させるのはもとより、制動装置を完全に操作すべきであるのに、同人は漫然と掘り崩したあとの柔軟な傾斜地に同車を停めたのみでなく、同車のシヤベルを地面まで落さず浮かせた状態で同車を停止させ、かつ同車の制動装置を不完全に操作した状態で停車させていた過失により、突如、同ブルドーザが山腹から滑り落ちて、その下方にいた原告を下敷にした結果、原告は右下腿骨開放性骨折、挫滅創、左下腿挫滅創、開放性骨折の傷害を被つた。

三、被告会社は右の本件ブルドーザの所有者であり、かつ同車輌を自己の作業場で整地作業に使用していたものであるから自動車損害賠償保障法第三条により、右の本件事故によつて原告が被つた人身損害を賠償すべき義務がある。

また本件事故は前記のとおり岸本毅の過失によつて発生したものであるから、被告会社は同人の使用者として民法第七一五条により同人が被告会社の義務の執行につき発生させた本件事故による原告の損害を賠償すべき義務がある。

更らに本件事故発生の現場は相当に急傾面の山腹であり、これをブルドーザで整地するについては当然、同車輌の運転免許を有する者だけに同車を運転させるべきものであるのに、前記岸本毅が無免許者であつたのみでなく、同作業場には全くその免許取得者がいなかつたのであつて、無資格者に本件ブルドーザを運転させた被告会社の過失により本件事故が発生したものというべきであるから、被告会社は民法第七〇九条により本件事故によつて生じた原告の損害を賠償すべき義務がある。

四、原告は本件事故による前記傷害のため昭和四二年五月六日より同四三年三月末日まで今治市蔵敷、三木病院に入院して治療を受け、続いて同年四月はじめから七月二六日まで同病院へ通院したが、その間に右下腿を切断し、かつ左足関節に運動障害が残つて完治の見込みがなく、生涯歩行ができなくなつた。

(一)  治療関係に要した損害金合計六万八、八〇〇円

原告は前記三木病院へ入院していた昭和四二年五月六日より同四三年三月末日まで、その病室料合計金五万二、八〇〇円(個室、一日につき金一六〇円×三三〇日)を支払い、かつ同病院へ通院した昭和四三年四月一日より七月末日までの間に前後四〇回にわたり通院に必要な交通費合計金一万六、〇〇〇円(一回につき金四〇〇円の割合)を支払つた。

(二)、逸失利益相当の損害金三七一万円

原告は本件事故による前記傷害のため昭和四二年五月六日より同四四年五月末日まで働こうにも働くことができなかつた。原告が本件事故にあわなければ、右の期間中、少くとも一か月につき金三万円をくだらない賃金を得られた筈であるから合計金一〇九万円(三万円×一二か月×三か年)の得べかりし利益相当の損害を被つた。

更らに昭和四四年六月一日現在、原告は四一才であり、かつ同年令の男子の平均余命は三一年であるから、将来、二二年間は稼働することができる筈であり、かつ本件事故にあわなければ同期間中も前記のとおり一か年につき金三六万円(一か月平均三万円)をくだらない賃金を得られた筈であるのに、歩行不能の前記後遺症のため少くともその二分の一の労働能力を喪失したことにより、同期間を通じて合計金三九六万円(一か年につき金一八万円×二二か年)の得べかりし利益相当の損益を被つた。これをホフマン式複式計算により中間利息を控除して昭和四四年六月一日現在に引き直すと金二六二万円(一万円以下切捨)である。

(三)  慰謝料金二〇〇万円

原告は前記のとおり本件事故による傷害のため三三〇日間にわたる入院生活を余儀なくされ、その後、一二〇日間の通院治療を受けてなお歩行不能の後遺症が残つたのであつて、このために精神的肉体的に多大の苦痛を被つており、その精神上の損害は金二〇〇万円をくだらないものである。

(四)  以上の次第で、本件事故による原告の損害合計は金五七七万八、八〇〇円であるが、そのうち原告は労災保険の休業補償金合計四五万一、二〇〇円(昭和四二年五月六日より同四三年七月末日までの間の分合計金二七万一、二〇〇円+同四三年八月一日より同四四年七月末日までの間の分金一八万円)の給付を受けた。

五、よつて、原告は被告に対し右の損害金残額五三二万七、六〇〇円の内金二〇〇万円および、これに対する本訴状送達の日である昭和四四年七月三〇日以降、右完済に至るまで民事法定利率である年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

六、被告主張の抗弁事実中、本件事故の発生につき原告に過失があつたとの点および原告が被告会社に対し損害賠償の請求をしないとの示談を締結したとの点はいずれも否認する。

第三、請求原因に対する被告の答弁ならびに抗弁

一、原告主張の請求原因事実中、昭和四二年五月六日、被告会社の工事現場において原告が怪我をしたことは認めるが、右の事故の発生につき被告会社の従業員であつた岸本毅ないし被告会社に過失があつたとの点、同事故が、原告主張のブルドーザの運行中に発生したとの点および原告が被告会社の被傭者であつたとの点は否認し、原告主張の損害はすべて知らない。すなわち

二、昭和四二年五月四日、原告は被告会社に対しブルドーザの運転者として雇つて貫いたいと申込んだけれども当時、原告はブルドーザの運転に全く経験がないことが判明したので、被告会社は右の申込みに応じなかつたところ、原告は更らに被告会社の工事現場でブルドーザに同乗してその運転技術を習得させて貫いたいと懇請したのでこれを許容することとした。そして同月五日、六日の両日、原告はブルドーザの運転技術を習得するため被告会社の近見山工事現場にきていて、六日に本件事故にあつたものであつて、当時、原告は被告会社に雇われていたものではない。

三、本件事故発生の当日である昭和四二年五月六日正午ごろ前記作業現場において、被告会社の運転手らは昼食をとるためブルドーザを完全に停止し、かつ安全装置(クラツチ)をかけて同車輌から下りて、その近くで昼食を始めた。ところが原告は同運転手らが制止したにもかかわらず、弁当をもつてブルドーザの運転席に上つて昼食をし、間もなく食事を終つて同車輌から下車するに際し、同車のクラツチレバーを押しはずしたため、原告が地上に降りると同時に同車が動き始めた。そこで驚いた原告が責任を感じてか同車を押して停止させようとしているのをみた被告会社の運転手、新名秀雄が大声で逃げるように叫んだところ、原告は直ちに後向きに逃げようとして小石につまずき倒れた結果、同車に轢れたのである。同車が動き出した場合に原告の人力でこれを停止できる筈がなく、かつ同車の後部には盛土がしてあつたから、そこまで移動すれば同車は安全に停止した筈のものであつた。

右の次第で本件事故はブルドーザの運行中に発生したものでないのはもとより、同事故の発生につき被告会社の従業員ないし被告会社に何らの過失がなかつたものであり、同事故は全く原告の一方的な過失(昼の休憩時間中に被告会社の制止を無視してブルドーザに乗車してクラツチの安全装置をはずした結果、動き出した同車の進路上へ出て倒れた過失)により惹起されたものであるから、これによつて生じた原告の損害を被告会社が賠償すべきいわれはない。

四、仮りにそうでなく、被告会社に賠償責任があると認められたとしても、原告にも重大な過失があつたから賠償額の算定にあたつて、この点が十分に斟酌されなければならない。

五、被告会社は原告に同情し、事故後の昭和四二年五月二七日、原告から申込まれた示談に応じて、同事故によつて生じた原告の損害につき被告会社に一切請求しないことを条件として、本件事故の前日である五月五日に被告会社が原告を雇用したことにして原告に対し本件事故による労災保険金が支給されるように申請手続をした。

六、以上の次第で、原告の本訴請求に応じられない。

第四、証拠〔略〕

理由

一、昭和四二年五月六日正午すぎごろ(午後零時二〇分ごろ)、被告会社の工事現場である今治市近見山の整地作業場において原告が怪我をしたことは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕を総合すると、同日正午ごろ被告会社の従業員である岸本毅が、それまで同作業場で整地作業用に運転していたブルドーザ六〇型なる本件自動車を同所に山腹の斜面の上方に向けて停車させて下車し昼食をしていたところ、原告が同車の運転席に上つて昼食をとり、同日午後零時二〇分ごろ同車から下りると同時に同車が緩やかな山腹の下方に向つて後退する状態で動き始めたこと、これに驚いた原告が自力で同車を停めようとして同車の下方に出て押しとめようとしていたのをみた被告会社の従業員、新名秀雄が無駄だから早く逃げてくれと叫んだこと、これを聞いた原告が後退して逃げようとしたが踵を土盛りにとられて仰向けに転倒した結果、同車の左側後部のキヤタピラで右左の両下腿部を轢かれ、左右両下腿骨開放性骨折、挫滅創の傷害を被つたことが認められる。

二、原告は被告会社は本件自動車の保有者であるから本件事故によつて生じた原告の人身損害を賠償すべき義務があると主張するに対し、被告は本件事故は同車の運行中に発生したものでないから自動車損害賠償保障法上の賠償責任はないと抗争するので考えてみる。〔証拠略〕を総合すると、岸本毅が本件自動車を停車させた場所は、山腹をブルドーザのシヨベルで削りとつた跡の相当に堅い土石上であつたこと、同停止地点の下方約二メートルの個所には山腹を削つた土砂が土盛りされていたこと、岸本毅は同車を停止させるにあたり、サイドブレーキを入れてこれに止めがねを掛けたうえ、変速器をローに入れてクラツチレバーを手前に引きエンジンを止めたこと、しかるに同人の下車したあとの同車の運転席に上つた原告が同車輌の安全停車装置につき知識がなかつたため、運転席にいた際に足先でサイドブレーキの止めがねを外したことに気付かなかつたばかりでなく、同車から下りるに際してクラツチレバーを前方に押したため、同車の停車装置がはずれてしまつたことをそれぞれ認めることができる。〔証拠略)中、右の認定と牴触する部分はその余の前掲証拠と対比して採用できない。被告は更らに原告が同車に上ろうとするのを見かけた新名秀雄が呼び止めたと主張し証人新名秀雄、同岸本毅の各証言中には、右の主張と一致する部分があるけれども、〔証拠略〕に照らして、同証言部分はいずれも採用できない。

右の認定事実に本件自動車の停車個所は山腹の一面であつてその傾斜が緩やかであつたにせよ、停車装置をはずせば同車がその重力により下方に向けて動き出す程度の傾斜面であつたことを合わせて考えると、岸本毅としては同車を停車させるにあたり、同車の後部キヤタピラに適当な歯止めを噛ませるなり、あるいは土盛りに接して同車を停車させるなりして同車が傾斜面を後退しないような措置をしておくべきであつたのに、これらをしなかつた点で停車の仕方に過失があつたものということができ、このため、原告の前記行為とあいまつて本件事故が発生したものというべきである。してみると、本件事故は同自動車の駐車中にこれが暴走して発生したものではあるけれども、同車の運行と相当因果関係があると認められるので、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条本文にもとづき、本件事故によつて生じた原告の人身損害を賠償すべき義務がある。

三、しかしながら、他方、原告としても本件自動車のような特殊車輌の安全停止装置につき何らの知識がなかつたのであるから、前記認定のとおりの傾斜面に停車している運転者の下車中の同車に近づくべきでないのに漫然と昼食をとるために同車の運転席まで上下した結果、その停止装置をはずしてしまい、かつ、そのため下方に向けて動き始めた同車の下方に出て無謀にもこれを自力で押し止めようとした点に過失があり、その結果、本件事故が発生したのであるから、原告も同事故につき責の一半を免れないというべきである。原告本人尋問の結果により、原告が昼食をするにつき本件自動車の運転席に上つたのは、当日は朝から曇天で時折り小雨が降つていたので、雨を避けるため、天蓋のある同所を選んだことが認められるけれども、右の事情は原告に前記過失があることにつき格別の消長を及ぼすものではない。

そして、以上認定の本件事故発生の事実関係に照らすと、双方が負担すべき過失の割合は原告の過失が七であるに対し、被告側の過失が三であると認める。

四、そこで進んで、原告主張の損害につき考えてみる。〔証拠略〕を総合すると、次のとおり認められる。

(一)、原告は本件事故による前記受傷後、直ちに今治市蔵敷三六七番地、三木病院へ運ばれて、事故当日の昭和四二年五月六日より同四三年三月末日まで同病院へ入院し、続いて同四三年四月はじめから七月二六日ごろまで前後四〇回にわたり同病院へ通院して治療を受けた。その間、入院後間もなく右大腿部を切断して同部位に大腿義足を装置する手術を受け、左下腿部は観血的整復固定術の治療を受け、昭和四三年七月二六日ごろ治癒したが、左足首部の動きが背屈、底屈ともに相当の程度、自由にできない後遺症が残つた。

(二)  右の治療を通じて、原告は前記入院期間中の病室代合計金五万二、八〇〇円(個室 一日につき金一六〇円)を支払い、かつ通院には往復にタクシーを利用せざるを得なかつたため、その代金合計一万六、〇〇〇円(一往復につき金四〇〇円)を支払つた。

(三)  原告は昭和三年一〇月一五日生れで、かねて格別の持病もなく普通の健康体であつて、普通自動車の運転免許を有し、他の建材店に勤めて商品の運搬をする自動車の運転をして一か月平均四万円たらずの賃金を得ていたが、自家営業を思い立つて退職し、その後、間もない昭和四二年五月四日に被告会社の前記作業現場でブルドーザの運転技術を習得する目的で被告会社との間に、ブルドーザの運転見習期間(一週間ないし一〇日)は無給とし、同車輌の運転ができるようになつた場合には、その業務に従事して日当一、二〇〇円の支給を受ける旨の雇用契約を締結し、これにもとづき翌五日と六日、いずれも同作業場で被告会社の他の従業員が運転するブルドーザの稼働中にその運転席の横に同乗して運転技術を習得している間に本件事故が発生した。

(四)  そして、本件事故発生の日である昭和四二年五月六日から原告の前記傷害が治療した昭和四三年七月末日ごろまでの一五か月間にわたり原告はその治療のために働こうにも働けなかつた結果、本件事故にあわなければ得られた筈である賃金合計四五万円(一か月につき金三万円の割合)の得べかりし利益相当の損害を被つた。

更に原告の傷害が治癒した昭和四三年八月より同四五年一〇月ごろまでの間も原告は格別稼働せず、一か年につき金一八万八、〇〇〇円の労災年金と妻子の得た賃金で扶助されているけれども、原告は本件事故当時三八才であり、厚生省統計調査部作成の昭和四一年簡易生命表により、三八才の男子の平均余命は三二・八一年であるから、原告はその気になれば昭和四三年八月より同六八年五月ごろまで(六四才まで)の約二五年間働くことができる筈であるけれども、前記のとおり本件事故により右大腿部を切断して同部に義足を装着しており、かつ左足首にも動きが相当に不自由な後遺症が残つたことからみて、その稼働能力の二分の一を喪失したものということができるので、本件事故にあわなければ右の期間中に得られた筈である賃金合計の半額である金四四七万円(一か月あたりの賃金三万円×一二か月×二四か年+三万円×一〇か月の半額)の得べかりし利益相当の損害を被つたものというべく、これを昭和四四年六月一日現在を基準として同時点以降の分をホフマン式年別計算により年五分の中間利益を控除して引き直すと金二九三万九、九四六円である。

以上のとおり認められ、他に右の諸認定を動かすに足る適切な証拠はない。してみると本件事故によつて原告が被つた財産上の損害合計は金三四五万八、七四六円であるけれども、これを前記過失の割合で相殺すると、このうち原告の請求できる損害は金一〇三万七、六二四円(円未満は四捨五入)である。

次に原告の前記傷害の部位程度およびその治療のため原告が三〇〇日余にわたる入院生活を余儀なくされ、その間に右大腿部以下を失ない、かつ左足首にも後遺症が残つたこと等からみて、原告が本件事故により多大の精神的肉体的苦痛を被つたであろうことを容易に推認することができる。その他、〔証拠略〕により認められる双方の資産収入の状況、原告の生活程度およびその余の諸般の事情に、前記認定のとおりの本件事故の態様、双方の過失の割合等を総合勘案すると、本件事故により被告が原告に支払うべき慰藉料は金五〇万円をもつて相当であると認める。

五、被告は更に、原告の右損害につき本件事故後、原被告間にこれを被告会社に請求しないとの示談が成立したと抗争し、〔証拠略〕を総合すると、昭和四二年五月二七日に原告の母ミサヲ、妹勝子およびミサヲから依頼された南条元一の三名と被告会社との間に、被告会社が原告の労災保険金の受給申請に協力するのと引き換えに原告が被告会社に対する賠償請求をしないことの合意が成立したことが認められるけれども、〔証拠略〕を総合すると、原告側に立つて同示談に応じた右の三名は原告から同旨の約束をすべき権限を何ら付与されていなかつたことが明らかであるのみでなく、右の示談は被告会社が原告方の財産上の窮迫と右三名の無思慮に乗じてその締結に同意させたことが推認できるので同示談は原告に対し何らの効力を有しないというべきである。そこで被告の右抗弁は採用できない。

六、してみると、被告は原告に対し前記損害金合計一五三万七、六二四円から原告においてそのうち労災保険金として給付を受けたことを自認する金四五万一、二〇〇円を控除した残額金一〇八万六、四二四円および、これに対する本訴状送達の日であることが記録に徴して明らかな昭和四四年七月三〇日以降、右完済に至るまで民事法定利率である年五分の割合による遅延損害金を払うべき義務がある。

よつて原告の本訴請求は右の限度内で理由があるから認容するが、その余の部分を失当として棄却することとし、更に訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条本文、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 滝口功)

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